飲み物で付けてしまったしみは、油性、水性、 不溶性の3つに分けることができます。付いてすぐなら落とせることも多いですが、熱と時間が加わると簡単には落とせないしみに変質してしまいます。一番困るのは汚れたままでしまってしまうことで、汚れが落ちにくくなるだけでなく、カビや虫食いを誘発することにもなります。また、しみの中にタンパク質や糖分が含まれる場合、アイロンなどをかけてしまうと熱で化学変化してしまい、二度と落ちない汚れになってしまうものもあります。
コーヒーやビール、ワインなどの汚れは基本的には水溶性の汚れなので、その場でぬるま湯などで洗い流せば落とせる事もあります。中性洗剤や石鹼で落とせることもありますが、これは汚れは落ちても生地がだめになる場合もあるので種類の確認が必要です。
しみの部分だけコツコツと綿棒などで叩いて汚れを追い出すこともできますが、漂白剤などを付けると色や柄が落ちてしまうので注意が必要です。よく飲食店でこぼしてしまい、手元のおしぼりでこすってしまう人がいますが、こすってもしみは落とせませんし、生地を傷めさせてしまうのでやめましょう。また、飲食店のおしぼりには衛生のため塩素系漂白剤が使われているのが一般的で、その成分が服の脱色を招いてしまう場合もあります。白シャツなどであればまだいいですが、ズボンやスカートはそこだけ色抜けが起こる場合もあります。拭くときは手持ちのハンカチやティッシュで拭いておいたほうが無難でしょう。また、清涼飲料水のしみは衣服に付着したときにはほとんど目立たず、後々になって繊維の間に焼き付けられて取れないしみになることがあるので厄介です。ただし、自宅で部分洗いをしても必ず洗剤は残りますし、物がウールなどの動物繊維の場合には黄バミの原因になります。家庭用洗剤には蛍光増白剤が配合されていることが多く素材の変色を生む場合もあるので、物によっては洗剤は使わないほうが良いでしょう。
着物の場合は自分ではケアしない
パーティなどへ着物を着て出かけるときに、飲み物じみを付けてしまう人は少なくありません。会食なども多いですから、汚さないのはなかなか難しいことですが、着物にシミが付いてしまった場合は、自分で取ろうとしてはいけません。焦ってしまうかもしれませんが、とにかくそのままにして、できるだけ早く着物専門のクリーニング店に出すのが一番良い選択です。何よりしみが付いたことを自分でちゃんと気付くことも大事なので、袖を通した着物は丁寧にチェックするようにしてください。特に女性の振袖などに大きくしみを付けてしまう事例が多いようです。
日本酒などは透明ですし、付いても生地に溶け込んでしまうので気付きにくいのがネックです。脱いだ後、臭いなどで確認する方法もありますので、気になる部分は申告して染み抜きを依頼しましょう。
クリーニングをすると生地が縮みますが、元に戻す仕上げができる専門店もあります。立食の場合、人との距離も近いので、自分ではなく他の人からワインなどをかけられてしまう場合も少なくありません。この場合は袖だけでなく、着物全体に広範囲にしみが付いている可能性がありますので、そうした場で着た場合は着物全体を専門のクリーニングに依頼するのが良いでしょう。着物は柄が命ですので、金彩加工が剥がれたり色目が薄くなったりしないよう、丁寧に仕事をしてくれるところに任せるのが一番です。
なるべく早くクリーニングへ
家庭で応急処置ができたとしても、時間をかけずにすぐにクリーニング店に出すことが大切です。見た目上落とせたような気がしてしまいますが、後々になって黄ばみになったり茶色いしみが浮かび上がったりするので、化学変化が進まないうちにプロに落としてもらいましょう。クリーニングに出すときには、なんのしみかを伝えてどこに付けたかを申し出てください。店舗によっては機械でアイロン掛けをするため、熱を加えて落ちなくなってしまった後に気付く場合もあります。安心なのは確かめながら手作業でアイロン仕上げをしてくれるところですが、事前に申告しておくことでトラブルを防げるでしょう。飲み物類のしみは、時間が経つにつれて酸化して後から出てくるので、クリーニング店でのトラブルも起きやすい問題です。ドライクリーニングだけでは目に見えないしみは落とす事ができない場合も多いので、おしゃれ着には特に専門の水しみ処理が必要になります。
クリーニング店の中にも、しみ抜きだけは専門の職人に出すというところがとても多いです。しみ抜きはそれだけ経験と技術とが必要な難しい作業であり、ひとつひとつ手作業で時間をかけて行う必要があることを知っておきたいですね。衣類の素材や染色、加工などから適切な手段を判断し、しみの種類や状況を正しく診断できなければ、しみだけを抜くことはできません。コーヒー・ビール・ワインなどに限らず、一見わかりにくい飲み物じみは、最適な知識を持った専門職人に依頼しましょう。